『ずっしょ』――
と、その筋ではこう略すらしい。
声に出してみよう。「ずっしょ」、「ずっしょ」……このなんとも言えない響きが、この作品の本質的な何かにフィットしているのかもしれない。今では私も愛用している。
さて、本作のキモは、まずなんといってもオープニングムービーである。
今日、ギャルゲーになくてはならぬものとなった観のある主題歌付きOPだが、これは通常、ゲーム本編とは完全に別製作のアニメーションであるから、ゲームとしての出来とは関わりなく傑作・怪作が生まれることも多い。私はいずれこのテーマで小論文を書こうと思っているくらいである。
『ずっしょ』のOPは、一部で『うる○やつら』などと呼ばれている(同ED『心細○な』みたいにサイドステップを踏んで踊るカットがあるだけなのだが)。このムービーの作画監督は、ゲーム本編のキャラクターデザインも務めたアニメーター、渡辺あきお氏。そう、今ではTV版『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』や『The
SoulTaker
〜魂狩〜』のキャラデザで一躍メジャーになった同氏だが、その絵は当時から魅力十分で、すでにファンには熱狂的に支持されていた。かく言う私も、無論その一人である。ともかく、ここででお見せできないのが実に残念で、できれば全カットをコンテに起こして解説したいくらいである。何がいいって、いやぁ、筆紙に尽くし難い。
さて、真面目に(?)レビューに入ろう。先に少し触れたが、本作はいわゆるギャルゲーである。
まずはストーリー。高校2年で独り暮らしをすることになった主人公は、手違いからなんと知らない女の子と一緒に暮らすことになってしまった!…オイオイ、という無茶、かつベタベタなラブコメ設定である。要するに、同居がバレないように(学校にバレると退学ゲームオーバー)暮らしつつ女の子と仲良くなろう、というゲームなのだが、システム面はオーソドックスなギャルゲーで、パラメータと金と体力の折り合いをつけながらスケジュールを管理して1年間を乗り切るというもの。
同居するメインヒロインは3人から選べる。才色兼備高飛車、ボーイッシュ、内気巨乳、とこれもお約束の3タイプが揃っているので安心。しかもそれぞれ上級生、同級生、下級生、と至れり尽せりの仕様である。ところが、この3人の他にも女の子は9人もいて、それぞれのシナリオとエンディングがある。したがって、そっちを目当てとしたとたん、同居しているヒロインはただの邪魔者に成り下がってしまう。また、選ばなかった2人のヒロイン候補は他の子に混じって登場するのだが(つまり総勢12人)、その場合、同居している場合には見られないイベントがある。
要するに選んだヒロインが全く優遇されていないわけで、ヒロインと同居するという基本コンセプトがまるで活かされていない。女の子3人じゃ少ないから増やすかー的な深く考えてないゲームデザインの姿勢がうかがえる。
しかし、このゲームにおいて特筆すべきは、そういった設定のいい加減さではない。以下に紹介する「トライエモーションシステム」こそが、『ずっしょ』を『ずっしょ』たらしめている一大新機軸なのである。
トライエモーションシステム、すなわち、女の子の感情を「喜・怒・哀」の3つの要素で表現するという斬新なシステム。これ自体は確かにいい着想なのだが、問題はその処理。まず、喜怒哀いずれかの感情が高まると、好感度レベルチェンジのイベントが発生する。その際に選んだ選択肢によって好感度が変化するのだが、……選択の時間制限が異常に短い!のである。早押しクイズばりの効果音が焦りを誘う中、表示された3つの選択肢を読む間もなく時間切れ。時間内に答えないと爆発音とともに女の子は怒って去ってしまう。……というのが大方の見方なのだが、実は私の見解は違う。普通のゲームでメッセージをノーウェイトあるいは最速にする程度の速読力があれば選択肢など一瞬で読めるはずだし、判断もまた一瞬で下すべきなのだ。みんなフ抜けたギャルゲーに慣れきってはいないか?
本来、女の子に相対するにはこのくらいの緊張感を以てするのが当然ではないのか? 単調なゲームの中で一瞬のスリル、そのコントラストが魅力なのではないか?
……って、やっぱりムリか。
ちなみに、好感度は喜ばせていれば上がるとは限らない。そう、普通、ヒロインを怒らせたり悲しませたりしてはいけない、と考えるのが当然だし、ほとんどの場合、その判断は正しい。ところが、このゲームではごく稀に、怒らせないとそれ以上好感度レベルが上がらない状態や、同様に悲しませる必要がある段階が存在する。もちろん、それがいつなのかは、やってみなければわからないし、喜ばせるべき場合に怒らせたり悲しませたりすれば、好感度が大幅ダウンするのは言うまでもない。
しかしだからといって、喜ばせてもダメ、じゃあ今度は怒らせてみるか、などといちいち試してはいられないので、エンディングが見たければ新声社から出ているグラフィカルマニュアルを買うことを勧める。……ただでさえマイナーなのに、さらに新声社亡き現在、入手は至難だが。
発売元が大手東芝EMIであるせいか、後述するプロデューサーの辣腕か、このゲーム、やけに関連商品が充実している。サントラCDはもちろん、デスクトップアクセサリ集CD-ROMが基本+メインヒロイン3人分の計4枚、トレーディングカード、はてはフィギュアまで出た。小説も出た。ちゃんとゲームのシナリオ担当者が書いている点はこの手のノベライズでは珍しく、評価したいのだが、テレビドラマ上がりの根っからのシナリオライターらしく、コンテ切る時ちゃんと演出しないとなーという印象の小説になっている。トレカはわりと出来が良く、一度もBOX買いしてないのにいつの間にか9割方集まっており、トレードを経てコンプリートしてしまった。
このように、大ヒットとは言い難いタイトルながら一種異様に充実した商品展開を見せた『ずっしょ』だが、その後製作母体である東芝EMIがゲーム事業から全面撤退してしまい、さすがに展開もこれまでかと思われた。
ところが2000年、突如として、株式会社HAMSTERなる会社からPS版『ずっといっしょ』が再発売。価格は1,500円。もちろん、私がまた買ったのは言うまでもない。
これは「MajorWave」なるブランドで過去のPSソフトの廉価版を再発売しているシリーズなので、ご存じの方もあるかもしれない。ところが、廉価版という性質上そのままの焼き直しが当たり前の同シリーズにおいて、『ずっしょ』だけはパッケージデザインを一新。そればかりか全CGについて、開発当時は機材の問題で不満を残した減色処理をやり直して再収録。さらにシナリオも一部イベントを調整。EDテーマは新曲に差し替え、と、ほとんど再開発というべき手間をかけている。破格の扱いと言って間違いない。
実はこれらが全て、本作のプロデューサー・総監督を務めた佐々木誠毅氏の暗躍によるものであることが、ご本人の口から明かされている。シナリオにも参加、主題歌の作詞も手がけた同氏は、副業は漫画家でもあるという多才な人物で、「佐々木無宇」のペンネームでシステムグラフィックも担当しているのだから脱帽である。
しかし、氏がほのめかしていた新作の可能性については、正直なところ私はさすがに疑問視していた。いくらなんでも、今後新作は……、と。
ところが、2001年、私を含むずっしょファンを三度驚倒させるニュースが発表される。
PamlOS専用ソフト、『ずっといっしょ
わくわく麻雀Vol.1』の発売である。予想だにしなかったところから新作が登場してきた形だが、これもまた、自らもPDA収集が趣味という佐々木氏の尽力により実現したであろうことは説明を待たない。残念ながら、脱衣麻雀ではなかったが。
ともかく、佐々木氏が健在である限り、PS2で『ずっしょ』の新作が発表される日も近いであろうことは、疑いを容れないのである。
( 2002.3.22 上海亭)